黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 呉林くんに指摘され、私は唇を噛んだ。

「ほら。早く銃を捨てないと、君の先輩を撃つよ」

 その言葉を聞きながら、私は息を吸い込む。
 
 大丈夫。
 できる。
 だって私はずっと伊尾さんに厳しく鍛えられてきたんだから。

「私は麻薬取締官です。正義のために必要なら、躊躇なく引き金を引く」

 そして前を向き、拳銃の引き金を引いた。

 パァンという大きな発砲音と同時に、呉林くんの頭上からガラスの破片が降ってきた。
 
 私が撃ったのは、彼ではなく彼の頭上にある照明だ。

「な……っ!」
 
 彼が降り注ぐガラスの破片から身を守るために両腕で顔をかばった瞬間、伊尾さんが床を蹴った。
 
 しゅっと空気を切る音がして、伊尾さんが素早い横蹴りを放つ。
 その長い脚をまともにくらった呉林くんの体が、勢いよく後ろに吹き飛んだ。

 それは一瞬の出来事だった。

 部屋の中がしんと静まる。

< 170 / 219 >

この作品をシェア

pagetop