黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 なんとかして脱出しようと私がもがくと、決して逃がさないというように伊尾さんの腕に力がこめられた。
 
 腕の中から伊尾さんを見上げる。
 彼は真剣な表情で私を見ていた。

「佐原」と掠れた声で私の名前を呼ぶ。

「……本当に、無事でよかった」

 絞り出すような声で言われ、彼がどれだけ私を心配してくれていたかが伝わってきて、全身が震えた。

「伊尾さん……」

 私が抵抗をやめて体から力を抜くと、伊尾さんは私の髪に顔をうずめぎゅっときつく抱きしめる。

 その指先は、かすかにふるえていた。

 どんなときも冷静で余裕のある彼が、こんなに私を心配し取り乱してくれた。
 大きな愛情を感じて、胸が苦しくなる。

 おそるおそる手を伸ばし、伊尾さんの背中に抱き着こうとしたとき、パンパンと手を叩く音がした。

「はいはいはい。盛り上がってるとこ悪いけど、そこでいったんストップしようか」

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