黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 驚いた私は、伊尾さんの腕を慌ててつかまえて引き留める。

「ちょ、ちょっと待ってください……!」
「なんだ?」

 なんだ、じゃない!

 私を救出してくれたときに『好きだ』と言ってくれたのに、その態度は普段通りの素っ気なさだ。

「い、伊尾さん、帰っちゃうんですか?」

 私がたずねると、伊尾さんはこちらを見下ろしわずかに顔を傾ける。

「なにか用があるのか?」

 不思議そうに聞かれた。


 あれ、伊尾さんに好きと言われたのは、私の勘違いだったのかな?なんて思いたくなるほど、冷静な表情。

 もしかして彼の告白は、極限の緊張状態に陥った私の脳が勝手に作り出した幻想だったのでは……。


「あ、あの。私の勘違いじゃなければ、伊尾さんに好きだって言われた気がするんですけど……」

 おそるおそるたずねてみる。

「あぁ。言ったけど?」

 涼しい顔でうなずかれ、私はますます混乱する。
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