黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 東海林さんはにやりと笑い、見せつけるように腕の中にいる私に頬ずりをした。
 
 いつも優しくしてくれる東海林さんは大好きだけど、ひげが頬に刺さってちょっと痛い。

「本当は伊尾も美緒ちゃんを甘やかしたいのになかなか素直になれないから、あたしにやきもちやいているのね」

 東海林さんの冗談に、伊尾さんの視線が一気に冷たくなった。

「……は? やきもち?」

 身も凍るような低いつぶやきに、私と東海林さんは「ひぇ」と縮みあがる。

 伊尾さんは小さくため息を吐き出した。
 片手でこめかみを押さえながら、こちらに視線を向ける。

「佐原」

 名前を呼ばれた私は、背筋をのばして「はいっ」と返事をする。

「もし相手が刃物を持っていたら、命に関わる事態になっていた。それだけじゃなく密売人を取り逃がして、薬に手を出す犯罪者がさらに増えたかもしれない」
「……はい」

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