黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 容赦ない言葉に、私は唇を噛む。

「仕事中は一瞬も気を緩めるな。もっと取締官としての自覚を持て」
「すみませんでした」

 頭を下げた私を一瞥すると、伊尾さんは私に背を向けた。

「さっさと事務所に戻るぞ。取り調べと報告書作成が待ってる」
 
 
 それだけ言って、廊下へ向かう。
 
 東海林さんが伊尾さんの背中に向かって「ほんっと伊尾はかわいくないんだからっ!」と大きな声で文句を言った。
 
 けれど、彼は振り返りもしなかった。
 
 残された私は、ぷりぷりと怒る東海林さんをなだめなるように口を開く。

「東海林さん、ありがとうございます。でも伊尾さんの言う通り、油断した私が悪いんです」
「そうやってかばうなんて、美緒ちゃんは伊尾が大好きよね。あんな愛想もかわいげもない朴念仁のどこがいいわけ?」
「だ、大好きというわけでは……」
 
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