黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 私が必死に唇をかんでこらえていると、伊尾さんは「あー、もう」と苦笑しながらつぶやいた。

「ほんとお前はかわいいな」
 
 伊尾さんは笑いながら私を抱きしめ、腕の中に閉じ込める。

「そういえば、ケガは治ったか?」

 思い出したようにそう問われた。私はうなずいて伊尾さんに手首を見せる。

「あ、はい。手首についた擦り傷もだいぶ目立たなくなりましたし、右足ももう痛みません。来週からは通常通り現場に出られると思います」
「そうか」

 私の背中に回っていた彼の手が、ゆっくりと上に移動してきた。
 私の髪に指をからめ、上を向かせる。
 
 見上げると、伊尾さんがこちらを見下ろしていた。
 
 彼の表情がかわる。
 普段は見せない、欲望をにじませた男の表情。

「……じゃあ、覚悟はできたか?」

 ぞくっとするような色っぽい声で囁かれた。

 私がうなずくと同時に、唇が重なる。

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