黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 そう言いながら伊尾さんは綺麗な動作で頭を下げた。
 
 年上の男の人に、こうやって感謝されるなんてはじめてだった。
 
 
 私は自分の行動が正しいのかどうかわからず、ずっと不安で怖かった。
 
 だけど伊尾さんに感謝され、自分は間違っていなかったんだと思えた。
 
 鼻の奥がつんとして、涙が込み上げてきた。
 
 
 うつむいて必死にこらえていると、大きな手がのびてきてくしゃりと私の髪をかきまぜた。
 
 その指先はあたたかかった。
 理屈じゃなく本能で、この人は信用できる人だと思った。


『一度薬にはまった人間が、立ち直るのはむずかしい。何度逮捕されても、更生施設で治療を受けても、過ちを繰り返し社会復帰できないやつは数えきれないほどいる』

 その言葉に、この先友人を待ち受ける厳しい現実を想像して、私は唇を噛む。

『だけど、確実に救う方法がひとつだけある』

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