黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 力強い声に驚いて顔を上げると、伊尾さんがまっすぐにこちらを見ていた。

『大元を突き止め薬物の蔓延を阻止する。この世から売人がいなくなれば、薬の中毒者はいなくなる』

 伊尾さんはそう言ったあと、『ま、理想論だけどな』と小さく笑った。


『ここからは、俺たちの仕事だ。まかせておけ』

 ぽんと頭をたたかれ、胸が熱くなった。
 かっこいい。心からそう思った。

『私も、そのお手伝いをしたいです……!』

 気付けば私は椅子から立ち上がっていた。


 そんな私に、伊尾さんは『あ?』とつぶやき眉をひそめる。

『私も将来麻薬取締官になって、薬に手を染める人をひとりでも減らすために働きます!』

 顔を輝かせ大きな声で言った私を見て、伊尾さんは一瞬動きを止めた。

 そしてため息をついてから、わずかに顔をかたむける。

『お前が、麻薬取締官に?』
 
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