黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 その驚いた表情を見て、伊尾さんが自分を覚えてくれているんだとわかった。
 
 うれしくて、頭に血が上る。

『じゃあ、新人からひと言挨拶を……』
 
 部長が言い終えるのも待ちきれずに、私は身を乗り出して顔を輝かせた。

『佐原美緒です! 二年前にこの麻薬取締事務所を相談で訪れて、そのとき担当してくださった伊尾さんに憧れて、取締官を志しました。大好きな伊尾さんと一緒に働けて、本当に光栄です!!』

 私が大声で言った瞬間、その場が一瞬しんと静まりかえる。


 あれ、もしかして私、変な発言をしてしまった?

 憧れの伊尾さんとの再会に浮かれていた私は、我に返りあわてて辺りを見回す。

 すると、みんないっせいに声を上げて笑い出した。

『今年の新人はずいぶん元気がいいな』
『しかも、伊尾に憧れて入ってきたのか』
『おい、伊尾。お前モテモテだな』

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