黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 みんな大きな口を開けて豪快に笑いながら、私に『よろしく頼むぞ』と声をかけてくれた。

 けれどその中でひとりだけ、一ミリも笑っていない人がいた。

 私の憧れの人、伊尾さんだ。


 全職員の前で公開告白してしまった私を、伊尾さんは綺麗な眉間に深いしわをよせて見ていた。

 その険しすぎる表情に、私は焦りだす。

 やばい、登庁初日にして、先輩をものすごく怒らせてしまった……?

『お前……』

 背筋が凍るほど低い声とするどい視線に、私は『はいっ』と返事をしながら震えあがる。

『二年前。俺は親切に、やめておけって、アドバイスしてやったよなぁ?』

 伊尾さんは綺麗な顔に薄い笑みを浮かべながら言う。けれどその背後には黒い怒りのオーラが見えた。

『アドバイスはもらいましたが、それは私に対する激励かなぁと』
『……んなわけあるか』

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