黙って俺に守られてろ～クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない～

　やくざみたいなパンチパーマや、ツーブロックの金髪といった柄悪そうな男たちが、だみ声で次々に怒鳴る。

　その状況に圧倒されつつ、私は麻薬取締官として働き始めたのだ。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　
＊＊＊



　クラブでの麻薬売買の現場に乗り込んだ翌日。


　私が合同庁舎の中にある麻薬取締事務所で報告書を作成していると、後ろから足音が近づいてきた。

「美緒ちゃん」

　柔らかい声に名前を呼ばれふりかえると、白衣を着た男の人がいた。

「あ、藍川さん」
　
　甘い顔立ちに明るい髪色の彼は、麻薬取締部で薬物の鑑定試験や、毛髪、ＤＮＡ分析などを担当している鑑定官の藍川さんだ。

「昨日押収した覚せい剤の鑑定結果出たよ」
「本当ですか？」

　うなずいた彼から、鑑定結果が印刷された資料を受け取る。

「混入していた不純物の内容を見ると……、今回は香港製、ですか？」