黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 そう言いながら、私の顔をのぞきこむ。

「危ない仕事ばっかりさせられてかわいそうに。美緒ちゃん、現場に出るのやめて俺の助手になれば?」
「藍川さんの助手ですか?」

 私が繰り返すと、藍川さんはにっこりと微笑みうなずいた。
 
 至近距離で見つめられ、私は目をまたたかせる。
 


 助手にならないかというお誘いは光栄だけど、私はやっぱり現場に出たい。
 
 伊尾さんみたいに、迷い悩む人たちを安心させてあげられるような、頼もしい取締官になるのが私の目標だからだ。
 
 
 そう思っていると、横から腕が伸びてきた。
 
 私の顎をつまむ藍川さんの手を、ぱしんと乱暴に叩き落す。
 そして藍川さんから引き離すように、その腕が私を抱き寄せた。

「なに勝手に佐原を口説いてるんだ」

 頭上で響いた低い声に、慌てて上を見る。
 
 そこには不機嫌な表情で藍川さんを睨む、伊尾さんの横顔があった。

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