黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「伊尾さん……?」
「藍川。こいつは俺のだから、ちょっかい出すな」

 伊尾さんは私を片腕で抱き寄せながら言い放つ。


 今、こいつは俺のだからって言った……っ!?


 まるで私を独占するような伊尾さんの言動に、ぶわっと音を立てて頭に血が上り、鼓動が速くなった。

 ゆでだこのように真っ赤になる私を見下ろし、伊尾さんは淡々とした口調で続ける。

「お前は俺の下で覚えないといけないことが、まだ山のようにある。基本もできていない新米が、鑑定室に異動したいと思うなんて百万年早い」

 そう言い切られ、頭に上った血液が一気に下がった。



 ……ですよね。
 伊尾さんが私みたいなひよっ子に独占欲を抱くなんて、ありえませんよね。

 そんなのわかっていたはずなのに、一瞬でも期待した自分が情けない。

 私はがっくりと肩を落とした。

 そんな私を見て、伊尾さんは眉をひそめる。

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