黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 藍川の忠告に、俺とは違う男の隣で笑う佐原を思い浮かべる。

 想像の中の佐原は、とてもおだやかで幸せそうに見えた。

「佐原がほかの男に惚れるなら、それでいい。むしろそのほうが、あいつは幸せになれる」
「なんでだよ。お前が美緒ちゃんを幸せにしてやればいい話だろ?」
「俺があいつを自分のものにしたら、きっとたくさんつらい想いをさせるだろうし、泣かせるかもしれない」

 それだけ言って黙り込むと、藍川は大きくため息をつく。

「まだあのことを引きずっているのか」
 
 あの事件があったのは、今から五年。
 そんなに簡単に、忘れられるはずがない。
 
 よみがえるのはふがいない自分への怒りと後悔。
 そして激しい罪悪感。

「あの事件は、お前のせいじゃない。悪いのは犯人だ」
「そんなことはわかってるよ」
「わかってるならどうして、美緒ちゃんを受け入れてやらないんだよ」
< 43 / 219 >

この作品をシェア

pagetop