黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 容赦ない言葉に、私は目を丸くする。
 
 伊尾さんは抱き寄せていた腕をほどき、大きな手で乱暴に私の頭を掴んだ。
 そして綺麗な眉をよせ、私を見下ろす。

「俺のそばにいろって、言っただろ?」

 艶のある低い声で言われ、心臓が大きく跳ねた。
 
 じわじわと熱くなる頬を両手で押さえると、「捜査中なんだから、ちょろちょろするな」と付け加えられ、ときめきかけた自分を戒める。

「はい。すみませんでした」

 私は表情を引き締め小声で謝った。
 
 
 伊尾さんの言うとおりだ。
 
 ふたりで行動するはずだったのに、店内の人の多さと雰囲気にのまれ、気付けば伊尾さんから離れていた。

「……俺がそばにいたら、あんなやつにお前の体をべたべた触らせたりしなかったのに」

 伊尾さんはひとりごとのように不機嫌につぶやく。

 大音量の音楽のせいで、彼がなにを言ったのかよく聞き取れなかった。

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