黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
  彼の頼もしさやかっこよさを見るたびに、どんどん惹かれてしまう。
  声を聞くだけで、顔を見るだけで、好きで好きで苦しくなる。
  
  その気持ちを、自分ではどうすることもできなかった。
 
 
  顔をしかめた私を見て、恵が小さくため息をつく。

「美緒は、そんなにその先輩が好きなんだ」
「うん。これからもずっと、好きでいると思う」

 この想いが叶うなんて思っていないけれど、今はただ、憧れの伊尾さんの隣にいられるだけで充分幸せだ。

 私がうなずくと、恵にガシッと手を掴まれた。

「でもさ、美緒ももう二十六歳なんだよ? 一度振られた男に二年間も片想いして、これからもずっと好きなんて、悠長なこと言ってる暇ないって!」

 痛いくらいの力で握りしめられ、驚いて思わず身を引き言い訳をする。

「でも、そう簡単に好きな気持ちは消せないし」
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