黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「え?」

 私が首を傾げたけれど、伊尾さんはなにも答えてくれなかった。
 そして彼は壁にゆるくもたれかかり、店内をながめる。
 
 シンプルなシャツの上にカジュアルなジャケットを羽織った私服姿の伊尾さんは、雑誌のモデルのようにセクシーでかっこいい。
 
 
 潜入捜査の真っ最中だというのに少しの緊張も見せず自然にふるまう彼を見て、さすが伊尾さん、と尊敬の気持ちが沸き上がる。
 
 私も経験を積めば、伊尾さんのようになれるんだろうか。
 
 なんて思っていると、伊尾さんがちらりと私に流し目を向けた。


「お前、あの男の腕をひねりあげようとしてただろ」

 慌てて「はい」とうなずく。

「あの男はひとりで来てる女性を狙って声をかけては、無断で体に触っていると思います。もしかしたら、それ以上の行為も」

 下心が透けて見える、男のいやらしい視線を思い出しながら言うと、彼の視線が険しくなる。
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