黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 ほっと胸をなでおろすと、協力者は「じゃあ、俺はそのへんをふらっと回って勝手に帰るから」と言って私たちから離れていく。

 私たち麻薬取締官に協力してくれる人は様々だ。

 一度違法薬物にはまり検挙された経験を持つ人。
 捜査の過程で知り合い、協力してくれるようになった人。
 
 なかにはクスリの売人で、商売敵を蹴落とすためにこちらに情報を流す人なんかもいる。

 ちなみに今回の協力者は現役ホストで、友人が何人もクスリに手を出し人生を転がり落ちていくのを見て、少しでも薬物被害を減らすために私たちに手を貸してくれているという。

 彼の好意を無駄にしないように、しっかり売人を捕まえなきゃ。

 気持ちを引き締めてから、さりげなくまわりを見渡す。
 薄暗い店内には音楽と人があふれ、熱気で満ちていた。

 人が密集しているせいか、湿度も温度も高い。

「ちょっと暑いですね」
 
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