黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 私がそう思っていると、伊尾さんもふっと緊張をほどきこちらを見た。

「少し外の空気でも吸うか」

 その言葉にうなずく。

 アルコールとタバコのにおいが充満する場所にいたせいで、少し息苦しいし疲れていた。

 フロアを抜け短い階段をのぼると、そこはビルの屋上のテラスだった。

 ライトアップされたプールがあり、まわりにはソファやパラソルが置かれ、自由にくつろげるようになっている。

 透明の柵の向こうには、東京の夜景が広がっていた。

「うわぁ……」

 まるで夢のような光景に思わず声がもれる。

 テラスからは、フロアの様子も見下ろせるようになっていた。


「偵察にちょうどいい場所だな」

 伊尾さんは美しい夜景に見向きもせずにそう言う。

 こんなにロマンティックな場所だというのに、彼の頭の中は相変わらず仕事でいっぱいのようだ。

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