黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 以前東海林さんが、伊尾さんを『朴念仁』と言っていたのを思い出す。

 たしかに彼にムードなんて皆無だけど、そのストイックさが伊尾さんらしくて素敵だと思う。

「しばらくここから様子を見ているか」
「そうですね」

 私がうなずくと、伊尾さんはフロアと夜景の両方を見下ろせる奥へと進む。

 テラスの端に近づくたびに、眼下に広がる夜景が鮮明に見え、私の体はこわばっていった。

 その変化に気付き、伊尾さんがこちらに視線を向ける。

「どうした?」
「いえ、あの……」

 視線をおよがせながらなんとか誤魔化そうとしていると、伊尾さんがわずかに首を傾けた。

「お前、もしかして高いところが怖いか?」

 図星をさされ、ぐっと唇を噛む。

「す、すみません。高所恐怖症なんて、情けないですよね」
「別に情けなくないだろ。誰にだって、怖いものはある」

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