黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 こんなの、かっこよすぎて好きになるなっていうほうが無理だ。

「い、伊尾さんは意地悪だから、信じられません」

 ときめく気持ちを誤魔化すために、つんとすまして言うと、大きな手がのびてきてわしゃわしゃと私の髪をかきまぜた。

「生意気だな」

 伊尾さんは意地悪に笑いながら、私の髪を乱す。
 まるで、子供をあやすような乱暴さだ。

「ひどい、せっかく服に合わせて髪の毛もセットしたのに……っ!」

 悲鳴を上げる私を見て、伊尾さんは愉快そうに肩を揺らして笑い声を上げた。


 そのとき、近くから不思議な声が聞こえてきた。

 なんだろう。

 思わず口を閉じ耳を澄ませると、それは女の人の声だった。

「あんっ。だめだよ。人がいるのに……っ」

 くすくすと笑いながら、女の人が言う。

 よく見ると、プールサイドに置かれたソファの上で、カップルが身を寄せ話をしていた。

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