黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
「大丈夫、誰も見てないって」

 男の人はそんな言葉で言いくるめ、彼女をソファに押し倒す。

「やぁん」と口では一応拒絶しながらも、どうやら彼女も乗り気のようだ。

 女性の声がさらに甘くなり、こらえるような喘ぎ声が聞こえてくる。

 ふたりがなにをしているのか察して、頭に一気に血が上った。


 うわぁっ。
 こんな場所で、いちゃいちゃしないでほしいっ!
 
 どうしていいのかわからず目をおよがせると、私の動揺に気付いた伊尾さんが小さく眉を上げた。

「お前、挙動不審だぞ」
「だ、だって……」

 この状況、気まずすぎる。

 今すぐ悲鳴を上げてこの場から逃げ出したくなる。

 でも、フロアに戻るには、カップルの前を通らなきゃいけない。

 盛り上がってるふたりの前を横切るなんて、なおさら気まずい。

 私が慌てているうちに、ソファがぎしぎしと音をたてて揺れ始めた。
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