黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 その揺れに合わせて、乱れた呼吸がここまで届く。

 こ、これは、一体どうすれば……っ!

 焦りと恥ずかしさで、全身が熱くなる。


 学生時代はひたすら勉強に打ち込み、社会人になってからは必死に仕事をしてきたか私は、恋愛経験ゼロだ。

 もちろん、男と人とそういう行為をした経験もない。

 それなのに、いきなりこんな生々しい場面をすぐそばで見せられて、軽いパニックになる。
 
 すると、頭上で長いため息が聞こえた。

「お前にはちょっと刺激が強いか」

 苦笑まじりにつぶやいた伊尾さんは、大きな手で私の後頭部を包み、そのまま胸の中に引き寄せた。

「俺の心臓の音でも聞いてろ」

 そう言って、私の頭を抱き込む。

 たくましい胸に左耳を押し付けられ、周囲の音が遠ざかった。

 密着した場所から伊尾さんの鼓動が伝わってきて、逆に緊張してしまう。
 
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