黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 こうやって伊尾さんの心臓の音が聞こえるんだから、私の心臓の音も伊尾さんに届いているというわけで。
 私が思いっきりドキドキしているのがまるわかりというわけで……。
 
 そう思うと動揺がさらに大きくなった。
 
 もう、普通に呼吸をすることさえままならず、どうしていいのかわからなくなる。
 
 こうやって密着していると、ふたりの間の空気の密度が濃くなっていく気がする。
 
 息をするだけで、お酒によったみたいに頭がくらくらしはじめた。
 
 体が熱くて仕方ない。
 
 少し冷静になりたくて、伊尾さんの胸を押しやり距離をとろうとした瞬間、引き攣るような甘い声が響いた。
 
 ぎょっとして声のほうを見ると、ソファの背もたれの向こうで、女性の上半身が揺れていた。
 下から突き上げられるたび、甘い声をもらす。
 
 うわ、これは絶対に見てはいけないシーンだっ!
 
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