黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 私がパニックになり凍り付くと、伊尾さんが腕で私の耳をふさぐように抱き寄せた。

「余計なもん見ないで、俺の方を向いてろ」

 そう言われ、真っ赤になりながらうなずく。
 
 気持ちを落ち着かせるためになにかにしがみつきたくて、おそるおそる伊尾さんの背中に腕をまわし抱き着くと、たくましい体がぴくりとこわばった。

 どうしたんだろう。
 
 不思議に思い、涙目で伊尾さんを見上げる。
 すると、こちらを見下ろす彼と目が合った。
 
 その瞬間、ぶわっと全身に鳥肌がたった。
 
 伊尾さんの視線が、ものすごい色気を纏っていたから。
 視線が絡んだだけで、体の中心が熱くなる。

「伊尾、さん……」

 どうしていいのかわからなくて、掠れた声で名前を呼ぶと、彼は顔をゆがめて笑った。

「そんな顔で抱き着かれたら、さすがに理性がもたないな」

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