黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さんのつぶやきに、どういう意味だろうと目をまたたかせると、視界も聴覚も奪うように、きつく胸の中に抱きしめられる。

「しばらくおとなしくしてろ」

 伊尾さんは私の頭の上に顎をのせ、そう言う。
 私はこくこくと首をたてに振ってうなずいた。

 こんな状況なのに、伊尾さんに抱きしめられているのが、うれしいと感じてしまう。
 
 たくましい腕や、体温。
 呼吸するたびにわずかに上下する胸に、心臓の音。
 伊尾さんのすべてが、愛おしくて仕方ない。

 このまま時間が止まってしまえばいいのに。

 捜査中だというのに、そんなことを考えてしまうくらい、伊尾さんが好きで好きで仕方ない。

 しばらくそうしているうちに、カップルは去っていったようだ。

 伊尾さんに腕をゆるめられ、ほっと息をつきながら顔を上げる。
 
 緊張と動揺のせいか、まだ頭がぼうっとしていた。
 
< 79 / 219 >

この作品をシェア

pagetop