黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 そう思い振り向こうとすると、伊尾さんの手が私の後頭部を包み、ぐいっと自分の方へ引き寄せる。

「……っ!」

 勢いあまって伊尾さんのたくましい胸に額をぶつけてしまった。
 そのまま抱きしめられ、息を飲んだ。

「い、伊尾さん……?」
「ふりむくな。さっきの男と店のスタッフがこっちを見てる」

 伊尾さんが低くささやく。その言葉に、緊張で肩に力が入った。

「まさか、私たちの正体がバレたとか……?」
「いや、バレてはいないと思うけどな。店員に怪しまれると厄介だから、誤魔化すぞ」

 伊尾さんは周囲に聞こえないように、長身をかがめ私の耳元に唇をよせながら言う。

 彼がしゃべるたびに、耳に吐息が触れ、背筋がぞくっと震えた。

 動揺のあまり、私はそのまま動けなくなる。

「なに固まってんだ。ちゃんと俺の恋人を演じろよ」

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