黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さんはただ、動揺する私を落ち着けるために抱きしめてくれただけだ。
 わかっているけど、それでもうれしかった。
 

 ふたりで出口に向かっていると、私を見て足を止める男の人がいた。

 なんだろうとそちらに視線を向ける。
 
 その人がこちらに近づいてきた。
 手足が長く細身で、すらりとした印象の男の人だ。

「もしかして、佐原さん?」

 その柔らかな声を聞いて、彼が誰だか思い出した。

「あ、呉林くん?」

 大学の同級生だった呉林くんだ。

 優秀でかっこよくて人気者だった彼とは、学生時代あまり接点がなかった。
 
 こんな場所で会うなんて、ちょっと意外だ。
 
 呉林くんは、少し長めの黒髪をさらりとかきあげ優しく微笑む。

「久しぶりだね、佐原さん。ここのクラブにはよくくるの?」
「ううん。たまたま知り合いが常連さんで、紹介してもらって今日はじめて来たの」

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