黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 まさか潜入捜査だと言うわけにもいかず、てきとうな言い訳を探してごまかす。

「そうなんだ」

 呉林くんが言いながら、私の後ろに視線を向けた。
 そこにいるのは、伊尾さんだ。

 背の高いふたりが視線を合わせる。

 私の頭上でピリッと目に見えない電気が走ったような気がした。

「美緒の知り合い?」

 伊尾さんは私の肩を抱き、呉林くんに視線を向けながらたずねてきた。

 み、美緒って呼ばれた……っ!

 普段はお前とか佐原とか乱暴に呼び捨てられているから、急に下の名前を呼ばれると動揺して頬が熱くなる。

 落ち着け。
 これは潜入捜査中で、伊尾さんは怪しまれないように恋人を装っているだけなんだから。
 
 心の中で自分に言い聞かせ、なんとか冷静さを保つ。

「う、うん。ええと、大学時代の同級生の、呉林くんです」

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