黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 今日の捜査が空振りに終わって、苛立っているんだろうか。
 
 そう思っていると、伊尾さんは窓のほうへ視線を向けたまま口を開く。

「お前、さっきの奴とは親しいのか?」
「さっきのって、呉林くんですか?」

 伊尾さんは、窓の外を見ながら無言でうなずく。

「とくに親しくはないです。大学時代はほとんど接点はなかったし、卒業してからも、連絡をとったり会ったりしていないし」

 私が答えると、「そうか」とつぶやいた。

「そのわりに、ずいぶんお前に興味がある様子だったな」
「そうですか?」

 どちらかというと、彼は伊尾さんを気にしているように見えたけど。
 
 伊尾さんは背もたれから体を起こし、こちらを見つめる。

「ああいうタイプの男は、やめとけよ」
「どういう意味ですか?」
「外面だけ優しそうで、腹の中ではなにを考えているのかわからないような男は、たちが悪いぞ」

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