黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さんにそんな忠告をされ、ちょっとむっとした。

 呉林くんがどんな男だろうと、私はまったく興味がない。
 だって、私が好きなのは、伊尾さんだけだからだ。

「じゃあ、伊尾さんみたいな意地悪な男の人ならいいんですか?」

 私の問いかけに、伊尾さんは一瞬目をみはり、すぐに顔をゆがめた。

「俺は、もっとやめとけ」

 伊尾さんは短く言って、体を背もたれに預ける。
 そのまま窓に顔を向け、黙り込んでしまった。


 やめておけ、か……。


 はっきりと拒絶され、私は膝の上に置いた手を握りしめた。

 隣に座っているのに、伊尾さんがものすごく遠く感じた。

 私がどんなに好きでも、壁を作られ心の内を見せてくれない。

 こんなにかっこよくて頼もしい彼が、もてないはずがないのに、伊尾さんには女性の影はまったくなかった。
 
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