黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 伊尾さんは腕の中で硬直する私を見下ろし、あきれたように小さく笑った。

 ふせたまつげの間から、涼しげな黒い瞳が私を見つめる。
 
 待って、伊尾さんに至近距離でこんなふうにみつめられたら、心臓が止まる……!
 
 私は心の中で悲鳴を上げる。
 
 今は潜入捜査中で、怪しまれないように伊尾さんと私は恋人同士を装っている。
 
 それはわかっているけど、こんなの、ドキドキするなっていうほうが無理だ。
 
 どうしよう。
 こんなに鼓動が速かったら、伊尾さんに心臓の音が伝わってしまう。

「あ、あの、距離が近いです……っ」

 動揺を誤魔化したくて、さりげなく伊尾さんの体を押す。

 私がなんとか距離を取ろうとしていると、逆に抱きしめる腕に力が込められた。

「恋人同士を装えって言ってるだろ。少しは耐えろ」
 
 鍛えられたたくましい体が密着し、さらに鼓動が速くなる。

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