黙って俺に守られてろ~クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない~
 それだけ言い、私の髪から手を放した。


『そのままでいい』
 
 そう言われただけなのに、胸を打つ鼓動がものすごく速くなり、私はその場に崩れ落ちそうになる。

 伊尾さん、かっこよすぎます……っ!!

 私は唇を噛み、心の中で叫ぶ。
 
 
 すると、鑑定官の藍川さんがこちらにやってきた。
 
 彼に気付いた伊尾さんは、私に背を向け話しかける。

「藍川。調べてもらいたいことがあるんだけど、いいか?」
「なに?」
「ちょっと気になる人物がいるんだ」

 そんな会話をする伊尾さんは、もう完全に仕事モードだ。

 私はひとりだけ冷静になれず、ぐっと唇を噛む。

 伊尾さんはただ、私の服装に興味がないからあんなふうに言ったんだろう。
 深い意味はないに決まってる。
 
 それでも、ありのままの私を見とめてもらえたような気がして、胸がきゅんとはねてときめいてしまった。

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