黙って俺に守られてろ～クールな彼は過剰な庇護欲を隠しきれない～

　私を女として見ていないくせに、こうやって優しくするなんて、本当にずるい。

「じゃあ、よろしく頼むな」

　私がこぶしをにぎりぷるぷる震えている間に、伊尾さんは会話を終え自分のデスクに戻っていった。

　その後ろ姿を眺めていると、背後からぷはっと吹き出す声がした。
　
　振り返った先に居たのは、藍川さんだ。彼はにやにやしながら私を見ていた。
　
「『お前は、そのままでいい』だって。普段は厳しい伊尾に優しい言葉をかけられたら、ころっと落ちちゃうよね」
　
　どうやら藍川さんは私たちのやりとりを見ていたらしい。
　
　おもしろがるような口調に、私は顔をしかめる。

「藍川さん。そうやってからかわないでください」
「からかってないよ。俺も美緒ちゃんはそのままで十分かわいいと思ってるよ？」
「おもいきり笑いをこらえるじゃないですか。からかっているようにしか見えません」