淡くて儚い私の嘘。
私は日波子。
3歳から水泳を習っていて、泳ぐのが大好き。
だから私は小学校の部活動で、当たり前かのように水泳部を選んだ。
―いや、当たり前だったんだ。
少なくとも、私の中では。
スイミングスクールとは違って、友達と競い合い励まし合いながら過ごす日々は、まさにキラキラ輝いていて。
そんな日々が大好きだった。
―でも、だから。
気づいてしまったんだ。
―今思えばこの事実は遅かれ早かれ、いつかは気づくことになる事実だった。
だけど、今は。
1番水泳を大切にしている時だったから。
私の中で、水泳は人生だったから。
私の全てだったから。
だから。
ただただ絶望した。
これを失望というのか、自棄というのか
いよいよ分からなかった。
ただ、私の人生の終わりを告げるのと同等であることは、分かった。
そう、私は気づいてしまった。
―自分に才能がないことに。
人の上に行けるほどの力がないことに。
今まで私の後ろにいた漠然とした黒幕が果たして突然現れたかのように、その事実にたどり着いた。
こんな些細な、重大なことにずっと気づかなかった。
いや、気づかないフリをしていただけかもしれない。
とにかくこの事実は必要なかった。
こんな事実なんか知らずに泳ぎ続けたかった。
―こんなこと、知らなくてよかったのに。
純粋に、ただひたすらに水泳が好きなだけでよかったのに。
なんで、ここで気づいてしまうのだろう。
なんで、今なんだろう。
なんで、皆遠くにいるんだろう。
なんで、私は向こう側の人間になれなかったんだろう。
なんで、私じゃダメだったのだろう。
―なんで、ここにいるんだろう。