ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
ひぃぃっごめんなさい、迫田さん!
無理っ、無理です!
このお祖母様に勝てそうもありませんっ!

でっでも…。

繋がれている大きな手が励ますように力を込めて私の手を握りしめた。

頑張れって、負けるなって迫田さんは言っている。
あぁそうだ。宜しくなって笑顔で迫田さんに頼まれたんだ。
一度引き受けたからにはこのまま負けるわけには
いきませんっ!


「あっ、あの!
私にはすでに両親もおりませんし、一人っ子で兄弟、姉妹もおりません。肉親は一緒に仕事をしている祖父だけです。
普通の一般家庭に育って仕事も…その…庭師をしています。年齢もそれなりにいってますし、その…大知さんとは釣り合わないのは承知しております…。

すみません…私のような女が大知さんとお付き合いしていて申し訳ありません…。

でも、私、大知さんが大好きなんです!愛してます!ずーっと大知さんを離したくないんですっ!」

あぁ、この台詞…さっき迫田さんが私に復唱しろって言った台詞じゃないっ!!

いやぁぁ!!

私ってば何みんなの前で恥ずかしいこと叫んでるの!

「ぷっ、ぶはっ!くっくっ」

隣にいた迫田さんが堪らずに肩を揺らして吹き出した。

なっ何笑いだしてるのよ!

俺が話すから隣で頷いて笑ってるだけでいいって言ったくせに、全然喋っても助けてもくれないじゃない!

ひっ酷いっ!

ムッとして恥ずかしさと悔しさで隣にいる迫田さんを涙目で睨みつけると、お祖母様が勢いよくたちあがり、つかつかと私達の目の前に歩いてくると、着物の帯に挿していた扇子を手に取り迫田さんの頭に思い切り振り落とした。

「痛っってぇ!!何すんだよばあちゃんっ!」

「大知っ!」

静かな庭園にお祖母様の一喝する声が響き渡る。

「お前って子は!
可哀想にみんなの前でなんてことを朋葉さんに言わせてるの!
適齢期を過ぎた女性とだらだらいつまでもお付き合いをしてお前は恥を知りなさい!

お身内はご両親もいらっしゃらなくてお祖父様だけですって⁉
なおのこと一刻も早く結婚してお祖父様を安心させてあげなさい!

あぁ大変!知基のお見合いになんてかまってる場合じゃなくなったわ!
安江さんあとのことはまかせましたから!

さぁ、朋葉さん、大知、行きますよ!」

迫田さんに握られている反対の手をお祖母様に捕まれる。

「どこにいくんですか」

叩かれた頭を押さえながら顔をしかめる迫田さんにお祖母様は

「もちろん、今から朋葉さんのお祖父様に結婚の承諾をもらいに伺います!」

「「えぇっっ!!」」

その場にいた全員が一斉に声をあげる。
だけどお祖母様の耳には届いていないようで

「あぁ、まずは指輪が先ね。私の行きつけの宝石店に婚約指輪を買いにむかいましょう!
指輪も贈らないでご挨拶なんて失礼ですものね」

引きづられるように歩き出した私は、この急展開についていけず、なんとかしてっ!と口をパクパクさせて迫田さんに訴え続けた。
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