ビビディ バビディ ブー! 幸せになーれ!〜この愛があなたに届きますように~
病院の待合室で私は大知さんの顔が直視できずうつむいまま押し黙っていた。

あんな濃厚なキスをされたあとに、うっかり照明の下で見てしまったトランクス姿の引き締まった上半身がいまだに脳裏に焼き付き離れない。

そんな私の様子が、おじいちゃんを心配して黙りこんでいるのだと思い込んでいる大知さんは

「しっかし、夜中に迷惑なじぃさんだな、ははっ」

と私を元気つけるようにおどけて笑い飛ばした。


「ごめん…なさい…。
私が病院からの電話をちゃんと聞いてなかったから…」

口がらでた謝罪の言葉は、目の前の大知さんに対してもだが、手術中のおじいちゃんにも向けたものだった。

病院にいるこんな状況の今でさえ、私の頭の中は、ずっと先ほどの大知さんとの出来事がぐるぐるして心臓がバクバクしているのだ。

今、おじいちゃんは足を骨折してボルトを入れる手術を受けている真っ最中だ。

生死にかかわる入院ではなく、私の結婚が嬉しくて、式のあとに仲間たちとどうやら二次会、三次会と飲み歩き、すっかりできあがってべろべろに酔っぱらったおじいちゃんは、階段から落っこちて大腿骨を折ったのだ。

待合室の私の隣に腰を下ろした大知さんは、私の肩を抱き寄せ

「まぁ人騒がせだが、良くはないが骨折の入院で本当に良かったな。
まぁそう簡単にはくたばりそうもなさそうだけどな、あのじぃさんは」

「そうですね。
本当に、骨折で良かった…」

大知さんの肩に頭を乗せ、そのままそっと彼に身を委ねる。


誰かの腕の中って、ううん大知さんの腕の中って、なんて暖かくて安心出来るんだろう。
もたれかかる私の頭を大きな手が優しく撫でる。
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