冷酷御曹司と仮初の花嫁
ただ、普通のサンドイッチではなく、スモークサーモンやクリームチーズや生ハムなどの食材も使われるから、材料費もそれなりになる。最高級の材料で作ったサンドイッチは本当に美味しいと思う。でも、店で提供されるほどの価値があるとは私には思えなかった。

「はい。大丈夫です。千夜子ママの希望なら、エディブルフラワーでも飾りますか?」

「陽菜ちゃんのサンドイッチは美味しいって評判よ。お祝いに花を添えるということならいいかも。エディブルフラワーはいいわ、華やかになるから、お祝いにいっぱいを飾ってね。本当に陽菜ちゃんのセンスっていいわ。

 いっそのこと会社を辞めて、アルバイトではなくて、うちの専属にならないかな。金曜の夜と土曜の夜だけなら勿体ないわ。平日は陽菜ちゃんのサンドイッチがないから、少し価格を抑えた業者が持ち込むものだけを使っているけど、週末限定の陽菜ちゃんのサンドイッチを頼まれることが多いのよ」

 そういってこういうチラチラと私を見つめながら、麗奈さんはお誘いを何度もしてくれる。

 けど、メインは昼の事務職で、あくまでこちらの仕事は副業。大学の奨学金と今の自分の生活を賄うために背に腹は代えられず、仕方なく自分の許せる範囲内で裏方ならとサンドイッチを作っている。でも、それと、これを本職にするのは違うと思う。

「ありがとうございます。でも、今で精一杯ですから。パーティなら少し飾りを多くしておきます」

「本当に残念だわ。飾りが多いのは千夜子も喜ぶわ。バイト代弾むわね」

「ありがとうございます。いつも助かります」
< 4 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop