冷酷御曹司と仮初の花嫁
着替えが終わって、控室にいくと、そこには千夜子さんが窓辺に飾られた花を眺めていた。本当なら店が忙しい時間なのに、千夜子さんを待たせてしまった。
「着物ありがとうございました。すみませんが後はお願いします」
「陽菜ちゃん。本当にありがとう。助かったわ」
「いえ、ちょっと緊張しました」
「そうよね。初めての店で、お客様にアフターに誘われたのですから。普通なら絶対に行かせないけど、佐久間さんならいいかしらって思ったの」
「なんでですか?」
「女の勘よ」
何かあるのかと思ったら、理由は『女の勘』。でも、麗奈さんにしろ、千夜子さんにしろ。この界隈に名前を轟かせるのだから、その『女の勘』も一応の確証があるような気がした。
「お疲れさまでした」
千夜子さんは机の上に置いてあった、綺麗な布の貼った箱から、白い封筒を取り出すと私に差し出した。
「今日のお給金です。本当にお疲れさまでした。助かりました」
「いえ。私もただ、少しだけ座って、後は食事に行っていただけですので申し訳ないです」
「これは陽菜ちゃんが貰うのが筋のお金よ。だから、遠慮なく貰って欲しいわ」
「ありがとうございます。それではこれで店に戻ります」
「麗奈によろしくね」
「はい」
千夜子さんに挨拶してから、店の裏口から出ると、フッと肩から力が抜ける気がした。店の裏口からでて、少し歩いてから、エレベーターに乗った。たまたま誰も居なくて、私は一人、自分の置かれている状況について考えた。とんでもないことになったのは分かる。
この決めたことが、いい方に転ぶか、悪い方に転ぶか……。誰もまだ分からない。
「着物ありがとうございました。すみませんが後はお願いします」
「陽菜ちゃん。本当にありがとう。助かったわ」
「いえ、ちょっと緊張しました」
「そうよね。初めての店で、お客様にアフターに誘われたのですから。普通なら絶対に行かせないけど、佐久間さんならいいかしらって思ったの」
「なんでですか?」
「女の勘よ」
何かあるのかと思ったら、理由は『女の勘』。でも、麗奈さんにしろ、千夜子さんにしろ。この界隈に名前を轟かせるのだから、その『女の勘』も一応の確証があるような気がした。
「お疲れさまでした」
千夜子さんは机の上に置いてあった、綺麗な布の貼った箱から、白い封筒を取り出すと私に差し出した。
「今日のお給金です。本当にお疲れさまでした。助かりました」
「いえ。私もただ、少しだけ座って、後は食事に行っていただけですので申し訳ないです」
「これは陽菜ちゃんが貰うのが筋のお金よ。だから、遠慮なく貰って欲しいわ」
「ありがとうございます。それではこれで店に戻ります」
「麗奈によろしくね」
「はい」
千夜子さんに挨拶してから、店の裏口から出ると、フッと肩から力が抜ける気がした。店の裏口からでて、少し歩いてから、エレベーターに乗った。たまたま誰も居なくて、私は一人、自分の置かれている状況について考えた。とんでもないことになったのは分かる。
この決めたことが、いい方に転ぶか、悪い方に転ぶか……。誰もまだ分からない。