冷酷御曹司と仮初の花嫁
　そういうと、麗奈さんは『美容室に行ってるわ』と言い残して、私を置いて出掛けて行った。千夜子ママのパーティに顔だしするのだろうから、帰ってくると、いつも以上に綺麗になっている。現役の時のママの写真を見たことがあるけど、別次元の綺麗だった。

　艶やかな中にしっとりとした大人の色気がある。女の私から見ても美しい人だった。そして、今でも十分に美しいと思う。数十分後に戻ってきた麗奈さんは予想通りに美しかった。

「綺麗です。とっても」

「ありがとう。今日、少しだけ店を抜けるけど大丈夫？千夜子の店に顔を出そうと思って」

「はい。分かりました。他のみんなもいるから大丈夫です。何かあったら、連絡します」

「陽菜ちゃんがいるから安心ね。それに今日のサンドイッチも素敵。きっと千夜子は喜ぶわ」

「安心かどうか分かりませんが……。サンドイッチは喜んで貰えたら嬉しいです」

　私が働くのは21時から早朝4時までで、次の日が休みだから出来ることだった。金曜日の仕事が終わり、一度マンションに帰って、シャワーを浴びて、ひと眠りしてから、カフェに行く。そして、早朝4時まで働き、帰ってから爆睡。

　起きたら溜まっている家事をして、またひと眠りしてからカフェに行く。週末の深夜勤務だけだけど、それでも昼間のお給料の半分以上は稼げていた。

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