冷酷御曹司と仮初の花嫁
 千夜子さんのお店から注文されたサンドイッチのオードブルが出来上がったのはカフェが開店して30分くらい過ぎた頃だった。真っ白なお皿にサンドイッチに、フルーツの飾り。

 おつまみになる可愛いピンチョスをいれて、ラップで包み、シフォンの布で包み、シルクのリボンで結び、その結び目には生花を飾る。

「お疲れ様。本当に上手よね」

「ありがとうございます。では、すみませんが、着替えて化粧してきます」

「ゆっくりしていいわよ。どうせ、しばらくはお客さん来ないと思うから」

 サンドイッチの準備が終わってから私は奥の部屋で化粧をすることにしていた。いつものナチュラルメイクと言う名の手抜きメイクから、この街に似合うメイクをする。ママがくれたお下がりの化粧品が大活躍で、質のいい物は発色もいい。

 口紅一つにとっても普段は買わないような艶やかな色だったし、華やかな匂いもある。

 サンドイッチを作る時に化粧をしているのが嫌で、最初の仕込みの時はほぼスッピンで行い、終わったら化粧をしてカフェに立つ。開店時間早々からお客様がくることは少ないので、ゆっくり出来るのが良かった。

 といってもそんなに化粧が上手いわけではないので、適当に顔に乗せているという感じだった。私が奥の部屋で化粧をしていると、裏のドアが開き、入ってきたのは疲れた顔をした男の子で、荷物の大きさから、学校から直行のようだった。

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