1線超えたお兄ちゃんとの恋物語
「咲良。」
と耳元で言われてピクッ、と体が動く。
蓮の唇が私の耳に触れそうで頭を動かさない。
「近いよ……?」
「日誌書き終わった?」
「う、うん。」
「じゃあ一緒に帰ろ。」
「離れて……?」
と私が言ったにもかかわらず蓮は私の手を引いて歩こうとする。
「鞄と日誌持ってないからっ。」
私は慌てて鞄と日誌を持ち蓮について行く。
歩いても蓮の耳攻めは続いた。
「日誌何書いた?」
「え~っとね~……」
私が答えに迷っていると誰かが話しかけてきて足を止めた。
「あ~、蓮くん!久しぶりだね!またかっこよくなってる~。」
「……お前よくさ俺と話せるよね。そういうの鬱陶しいからやめて。行くよ咲良。」
私に話を振られてコクン、と頷く。
「じゃあバイバイ萌乃───」
とまた蓮と歩き出す。