1線超えたお兄ちゃんとの恋物語
〈side 蘭〉
晴輝を好きになったきっかけ───
それは晴輝が間違えて私の教室に入ってきた時だった。
ガラガラ。
「あっ。間違えましたっ。」
と晴輝が帰ってしまいそうだったから
「ちょっと待って。」
と止めた。
「ゆっくりしていけば?私しかいないんだし。」
「あっ、はい。じゃあそうします。」
となったことからだった。
「まあでもゆっくりって言ってもすることないな……。あっ、そうだ、名前何?」
「山本 晴輝、です。」
「じゃあ晴輝って呼ぶね。私は藤井 蘭。蘭って呼んでくれればいいよ。」
くれればいいよ、じゃなくて呼んでほしい。
さん、とかちゃん、とかあんまり好きじゃないから。
「じゃ、じゃあ蘭……」
「う~ん、じゃあ好きな人いる?」
私が頭に浮かんだのが奏汰だったからそう聞いた。
「いますけどね……」
「あっ、タメ使って!」
敬語も使われるのも好きじゃない。
「は……うん。好きな人はいるけど片思いだから……」
私と同じ、かぁ……
「私も。向こうは彼女あり。」
「俺は一途な人で。」
そっか。
私と同じような人がいたなんて。
「……私たち、何か似てるね。」
「……そうだね。」
昔どこかで会ってた……みたいな。
そんな気分になった。
「LINE交換しよ。」
「うん。」
と晴輝とLINEを交換してその日は終わった。