誰にも教えてアゲナイ!
聞こうとしたタイミングでポケットの中のスマホの音が鳴った。スマホを取り出して確認した彼は慌てているみたいだった。

「百合子、ちょっと待ってて、一回家に帰るからっ」

「う、うん…」

あたふたしながら部屋を出て行く彼。

急に何事ですか!?

いくら近いとはいえ…コートも着ないで寒いでしょう…!

ハンガーにかけといてあげよう。

持ち上げた瞬間、ポケットからゴトンッと何かが落ちた。



ん?



いくつかの鍵とメモ紙。

よ、読んじゃ駄目なんだけどっ、小さい紙だから、ついつい視界に文字が見えてしまう。



”4時に何時もの場所で。

里沙”



綺麗な字。

ハートとうさぎが描かれている淡い色彩の可愛いメモ紙。

間違いなく女の子…からだよね?

いつもの場所って、待ち合わせだよね?



彼女が居るんじゃん。

まぁ、居たって関係ないけどさ……。

あんな奴、ただのエロガキなんだし……!

ポケットにまた入れて置こう、鍵とメモ。



「ただいまぁ、百合子、ごめ…ん…ってアレ?」



ポケットにしまい込んでいたら、帰ってきたようだ。

扉を開けたら目線はコッチ、私の手の先。



「メモ…見た?」

「うん、ごめん。コートかけてあげようと思ってたら鍵と一緒に落ちて来た」
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