誰にも教えてアゲナイ!
平然とそんな事を言ってきた。

それ以上聞かれたくないのかもしれない。

……聞きたいけど、絶対、聞いてなんかやらないっ!

手の内で転がされたりしないっ!

私は聞きたい気持ちをぐっと堪える。



「絶対に聞かないからっ!」

「あはは、そうしてー」

わざと言ってきたんだ、コイツは。

聞かないように、わざと……。



聞いてやるもんか、絶対!



「明日はさ、来れないんだ…」

「え?」

「ごめんね」



ニッコリ笑って『ごめんね』って。

ま、待ってないってば!

待ってないけどさ、寂しさはあるんだよね。



「明後日とその次も来れるよ。待っててね、百合子」

「はいはい」



なるべく早く帰ろうとか、美味しい物を作ってあげたいとか、一瞬で色んな事を考えた。

コノ子が来る事が日課になるのかな?

ワクワクしている自分がいるよ。

心を踊らされてる。

味見してやるつもりが、味見もされてるしっ。



「百合子、考え事?」

「え?あ、何も考え事なんてしてないよ、うん…」

「ふうーん…」



疑いの眼差しを向けつつ、またくつろぎ出す。

二人でテレビを見たり、飽きたら何故かオセロなんかをしてみたり、そんなゆったりとした時間を過ごした。



―――これからほぼ毎日、二人で居る日々が続く。

彼は必ず家に帰って一度も泊まりはしなかった。

彼氏でも無いけど、二人で居る事が楽しくて、毎日が待ち通しかった。

その後は不意打ちのホッペにチューとかもしてこないし、安心していた。



安心していたんだけど、彼の素性を知る内に…厄介な事に巻き込まれるだなんて、



この時はまだ想像出来なかった―――……


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