誰にも教えてアゲナイ!
彼の不意打ちに体制を崩して、ドンッという鈍い音が鳴り、私はおでこを玄関にぶつけた。

「いたっ」

「あれ?…うわぁあぁっ」

おでこを押さえる私の前で彼は起きたらしく、驚く声が聞こえる。

「お姉さん…何してるの?誰?」

「誰って、ここの住人!」

誰?って、コッチが聞きたいよ。

私はアパートの玄関横の表札を指さして、「201号室の佐倉」と言った。

「えっ…」

「驚くのは後にして、背中に回している手を離してよっ」

「ごめんなさい…でも…このアングルをもう少…しっ…」

「調子乗ってんじゃないわよっ、エロガキがぁっ」

彼の目線の先には、かかんだ私の胸の谷間。

寒いけど、ニットのロングカーデをボタンを留めずに居たから……。

女の子のコーディネートも難しい。

胸を強調してる訳じゃないのに…女の子らしい服ってどうも苦手。

「……起きたら、急に寒気がしました!寒っ!」

彼は身震いをしていた。そんな彼を見て思わず、誘いの言葉をかけた。

「……暖かい物でも飲んで行く?」

「喜んで!」

―――寒くて可哀相だったし、せっかくの可愛い獲物を逃がすのは勿体ないので、部屋にあげた。

まぁ、後者のが有力?

「サクラさんは一人暮らし?」

「そうだよ」

カフェオレでも入れてあげようと台所に立つ私。彼をソファーに座らせて、ブランケットを肩からかけてあげた。

そう言えば、名前を聞いていなかった。

「名前は何て言うの?」

「椎名 諒(しいな りょう)だよ。華の高校二年生。お姉さんの名前は?」

「二年生?……私は佐倉 百合子(さくら ゆりこ)だよ」

二年生かぁ……。

高校生とは知ってたけど、約3歳年下だよね?

私自身の誕生日が2月末だしなぁ。
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