誰にも教えてアゲナイ!
「百合子…百合ちゃん…ゆりゆり…ゆりりん…ユリリンって呼んでいー?」

カフェオレが出来上がるのを待っている間に、彼は一人でブツブツと何かを言ってた。その場で何かとはあだ名ですか……!

「ユリリンなんて嫌っ!!…呼び捨てでいーよ」

”ユリリン”って、どんなネーミングセンスだよ!?…って、つっこみは置いといて、恥ずかしいってばっ!

「じゃあ、…百合子」

「はぁーい」

返事と共に出来立てのカフェオレをテーブルに置いて、彼の隣にポスンッと座る。

友達も呼び捨てだし、そんな恥ずかしい?あだ名はつけられた事がないから、年下だけど呼び捨ての方が心地良い。

カフェオレのマグカップを持ちながら、隣に座る私の顔をチラチラと見始める。

「……何?」

横目で彼を見ながら訪ねた。

「百合子、ご飯食べたいな!」

「はぁ?」

「……駄目?」

「お腹空いてるの?有り合わせでいい?」

コクン、コクンと頷く彼。

子犬みたいに寂しげに見つめられたら、作ってあげたくなっちゃうよ。

本当、可愛い。

「百合子、エプロンしないの?」

再びキッチンに立つ私の傍に来て、ジロジロと見てくる。

「しない。面倒なモノは嫌い」

「エプロンした方がそそるのに?」

前言撤回!

可愛いけど……エロいタダのガキ。

追い返してやろうか?



……でも、この子は何でアパートの玄関の前に座って居たんだろう?

帰る所がないとか?……だとしても何故、私の家の玄関の前?

この子のペースに巻き込まれて、ご飯作ってあげてる場合じゃない!

エロトークに付き合ってあげてる場合じゃないってば!

肝心な事を聞かなくちゃ駄目じゃない?

パスタを茹でながら考えている私の後ろ側では、勝手にテレビをつけたりしている彼……いやタダのエロガキが居た。

「百合子、これ見る?」

毎週やっている定番のラブストーリーをかけていた。
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