誰にも教えてアゲナイ!
彼の行動はいつも直球で、私の心にすんなり入る。

背中にドキドキという早い鼓動が伝わってくる。

彼も緊張してるんだ。



「あ、のさ、とりあえずお皿置かせて…」



彼の腕を無理矢理すりぬけて、テーブルにお皿を置く。

今日はちょっとだけ、気を緩めてあげる。



「諒、私なんかでいいの?」

「百合子がいいのっ」

「じゃあ、さっきのご褒美あげるね」



彼の頬っぺたを両手でそっと触れて、軽いキスをした。



あ、あれー!?

唇に手を当てて、顔は真っ赤になる彼。

目の前で立ち尽くす彼は、手を当てたまま動かない。


「諒…?」

「俺からもしてみていい?」



コクン…と頷く私。

少し震えた手が、耳の後ろに触れる。

軽く触れるだけのキスをすると、彼はうなだれて椅子に座る。

私と目線を合わせないように、アッチ向いてるし。

耳まで真っ赤になってる。



「どうしたの?」

「何でもない…つーか、寄らないでっ」



顔を覗くと寄らないでだって!

馬鹿っ、何て失礼な奴なんだ。



「もういいっ!何もしてあげないからっ」



ガシャンッと音を立てて、流し台へと食器を放り込む。



「あ、嘘ウソ、怒らないでって…だって、格好悪いけど…やっぱり言いたくないから言わない」



聞こえない振りをして、何を言わずに食器を洗う。

この後の彼の言葉に私は、スイッチ入っちゃった―――……
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