誰にも教えてアゲナイ!
台所で林檎を剥いている彼の横に立って見ていた。

スルスルと一気に林檎を剥いていき、皮はクルクルとした一本線となった。

「百合子、見てみて、ヘビー」

「林檎の皮剥いてヘビなんて言う人、初めてだわ…」


手渡された皮のヘビを見ると、かなりの薄さだった。

女性だって、この薄さはなかなか無理なんじゃない!?

私よりも器用だったりして?

その後、剥いた林檎を八等分して、二人で座った。

「うさぎ林檎が良かった?」

シャリシャリと音を立て、林檎を食べながら聞いてきた。

「林檎の皮、嫌いだもん」

「皮の方が食物繊維がたっぷりなのにな〜。食べた方がいいのにな〜」

大嫌いらしいブロッコリーを押し付けたからか、チラチラと顔を見ながら言ってきた。膨れっ面のこの子も可愛い。

「だったら、最初っから皮付きで剥けばいいじゃん」

「……ヘビにしたかっただけ」

売り言葉に買い言葉みたいな感じの口調で言ったら、拗ねちゃった。

黙り込んじゃった。

「…ご、ごめんね。怒ったわけじゃなく……」

「へへっ、不意打ち…」



コイツ…!



拗ねたかと思って顔を覗き込んだら、頬っぺたにチューしてきた。

とんでもなく、手の速い奴なのかも……?
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