君は私の唯一の光
なぜか急に喉が渇いた。ベット脇の冷蔵庫には、いつもあるはずの買い置きペットボトルがなかった。いつまでも喉が渇いた状態でいるのは体に良くないので、自販機に買いに行こうと、財布を持って、ベットから抜け出した。




カーテンを開けると、一斉にこちらに視線が向かれた。びっくりしたけど、とりあえず軽くお辞儀をして、ささっと病室から出た。




お茶を買って、病室に戻ると、洸夜くんの大きくて少し焦ったような声が、私に投げかけられた。





「乃々花、大丈夫か!?」




「え?なにが?」





特に変な事しちゃった覚えないんだけどな。




「何って、急に出てったから、なんかあったのかと思って。」




「あ、ううん。ただ、お茶を買いに行っただけ。」




「え?あ、そ………か。なら、よかった。」





洸夜くんの顔から本気で心配してくれてたのがわかる。友達との話を途切れさせちゃって申し訳ないけど、嬉しかった。





「気にかけてくれて、ありがと!」




「あー、うん。別に。」





ベットに戻ろうとすると、後ろから手を掴まれた。びっくりして振り向くと、少し日に焼けた、かっこいい感じの女の子が笑顔でこっちを見ていた。





「初めまして。洸夜の所属するサッカー部のマネージャーの松原寧々(ねね)です。よろしくお願いします。」





「え、あ、こちらこそ……よろしくお願いします。私は、桑野乃々花です。」






なんか……ちょっと強引?





「乃々花ちゃんね。これから、度々来ると思うから、その時はよろしく!」




「あ、はい。」




「てか、乃々花ちゃんって可愛いね。お人形みたい。」




「ありがとうございます。」





あ………そろそろやばいかも。お茶飲まないと。変な汗出てきた。呼吸も乱れて……。





「乃々花?」





洸夜くんの声が聞こえる。でも、今の私に、それに返事をする余裕はない。





「はぁはぁ。っ………。」




お腹が痛くなってきた。やばい、倒れそう。




「え?どうしたの?」





松原さんも、隣で焦ってる。




最悪だ。話を止めるだけじゃなくて、みんなに迷惑をかけちゃってる。



この痛みを止めたい……そう思っても、体は真逆の方に悪化していく。





遂に立っていられなくなって、膝をついた。みんなが慌てている。洸夜くんが、ナースコールしてくれてる。申し訳なくなって、涙が溢れたのと同時に扉が開いて、「ののちゃん!」っていう由奈さんの声が聞こえた。





「由奈さん、お茶、ください…。」




「お茶ね。はい。」





キャップを開けてくれたペットボトルから、お茶を取り込む。喉が潤った。でも、お腹の痛みは、そう簡単に消えてくれない。





深谷先生も来てくれて、私はベットに運ばれた。洸夜くんの友達の皆さんも、病室から出されちゃって、謝罪したい気持ちでいっぱいになった。




そのあと、薬を飲んで、すぐに私は眠ってしまった。





目から涙を流して。


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